ハードボイルド小説ってずいぶんひさしぶりに読む気がする。
レイチェル・ウォレスは若くタフで、それゆえ敵の多い女性だ。
スペンサーは男らしさの美学を持ったタフガイだ。彼は、その美学を時代遅れだと考える女性の護衛として雇われる。二人は、仕事以外では決して目を合わせることはない。
だが、レイチェルがさらわれたとき、スペンサーは彼の命を賭ける。レイチェルを救うために。
―Looking for Lachel Wallace カバー裏説明文より―
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この概要を読んで、思想信条的に相容れないボディガードとクライアントの対立がスリリングそうだと考えた自分は悪くない、はずだ。しばしばぶつかり合いながらも最後にはお互いを理解するようになって、「お前も中々やるじゃないか」「あなたもね」的な展開を期待するのは割と普通の感覚、のはずだ。
いや、このアオリから、ハードボイルドラブラブ小説になるとは想像できなかったよ。
この私立探偵スペンサー、実のところシリーズ物で、表紙には明記されていないスペンサーの恋人スーザンというのが出てくるのだけれど、彼女が魅力的すぎて騒動の中心のはずのレイチェルが霞む霞む。むしろ、レイチェルは中盤でさらわれて以降、行方不明。出番皆無。
というわけで、スペンサーは失踪者の行方を捜索する傍ら、定期的に自室に帰ってはスーザンとスイートな恋人生活を送るのだ。
やれ腕を組んで一緒にショッピングに出かけたり、やれいそいそとエプロンつけてパスタを茹でてみたり、やれ暖炉の前で一枚の毛布に二人包まって本を読みながら夜を過ごしたり。いや、いいんだけどね。むしろ探偵部分より私生活の方が面白いんだけどね。どうしても先入観が抜けきらない自分が悪いのかもしれないが、真面目に構えて読んでるとたびたび腰がくだけそうになるのはどうしたものか。
ハードボイルド気分に浸りながら読んでいて、思わず噴いてしまった秀逸な一節:
There were people hanging around in the lobby of the Parker House and the coffee shop on the Tremont Street side was nearly full. I spotted Julie Wells alone at a table for two by the window looking out at the snow. She had on a siliver ski parka which she'd unzipped but not removed; the hood was thrown back, and the fur trim tangled with the edges of her hair. Underneath the parka she wore a white turtleneck sweater, and with her big gold earrings and her long eyelashes she looked like maybe 1.8 milion. Susan was a two milion.
パーカーハウスのロビーは行き交う人の波が溢れそうなほどにごった返し、トレモント通り脇のコーヒーショップもほぼ満員の状態となっていた。(聞き込み先の人物)ジュリー・ウェルズの姿は雪を被った窓際の二人席で見つかった。彼女はジッパーを大きく開いたシルバーのスキーパーカーを羽織り、フードを背中側に纏め、襟の毛皮を彼女自身の髪と絡ませていた。パーカーの下の白いタートルネックセーター、それに大粒の金のイヤリングと長いまつげは、彼女をあるいは180万ドルの価値のある美女と思わせた。ちなみにスーザンは200万ドルの美女だ。
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