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計算されたいびつな物語。
この表紙から、海洋アドベンチャーや、あるいはサバイバルストーリーを期待して読み始めると、最初思いっきり肩透しをくらうことになる。語られるのは主人公Piの学生生活だったり、彼の家業の動物園の日常だったり、はたまた独特な宗教嗜好についてだったりと、一人語りの私小説が延々と続くので、何か間違えた本を読んでいるのではないかという気になってくる。 とはいえ、それが退屈な内容になっているというわけでもない。Piはキリスト教とイスラム教とヒンズー教を同時に信じる少年だが、各教の信者は異教を認めず、Piの前で互いに罵り合う。その辺りの遣り取りは宗教に疎い自分でも思わず噴き出してしまう。真剣な場面でもどことなくコミカルな語り口はこの小説の持ち味。 そしてある時点で唐突に話は転回し、彼は難破する。かろうじて助かった1艘の救難ボートの乗員は、Pi少年、オランウータン、シマウマ、ハイエナ、そしてベンガルトラの1名+4匹。非常食料は93日分。ここからPiの過酷な生存競争が始まる。ボート上では逃げ場所は限られ、すぐ手の届く距離には大型肉食獣。Pi少年ははたしていつまで生き延びることができるのか。 ほとんど読了時の正直な感想は以下のとおり。これほんと、あっちにいったりこっちにいったりしてテーマの一貫しない本だなー。最初のほうの日常生活は結局ほったらかしだし、最初は現実志向なサバイバルストーリーだったのに、話が進むにつれてファンタジー混ざってくるし。若さと勢いにまかせて書きなぐった小説っぽい。普通に面白く読める話ではあるけれど、そーんなに絶賛されるほどでもないかなあ。 違うんだ。この話、一見本筋に見える(実際大半のページを占める)漂流記は、真のテーマでは、ない。 最後の最後で、今までまったく別々の方向を向いていたエンターテインメント要素と哲学要素が意外な形で融合をする。話についていけなかった読者が、何が起こったのか理解するのに幾呼吸。構成を理解できた後の感想は以下のとおり。これは、他に類を見ないほどいびつで不恰好で、そして、巧みに調和のとれた一冊だ。 |
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