その日まで、オードリーは自他共に認める"良い子"だった。 彼女は飛び級で高校に入学し、学年4位の成績を収める才女であり、さらに、家業の貸し衣装屋も率先して手伝う、父の自慢の娘でもあった。 オードリーには、友達以上恋人未満、ちょっと気になる存在のルークがいたが、彼が自分以外の女の子にもちょっかいを出していることを知ってしまい、二人の関係を清算することを決意する。最後にひとつだけ、一生忘れられなくなるようなプレゼントを残して、全て終わりにしよう。 そして。何者かが、その二人だけの秘密、すなわち、彼女がルークにフェラチオをしている現場を盗撮し、それをクラス中のだれもかれもに送りつけはじめた日、彼女はもはや"良い子"ではなくなっていた。 恥ずかしい写真は携帯から携帯を渡って複製され、担当教師、校長先生、そして父親の営む店のアドレスにまで送りつけられていた。家族会議から始まる、ちょっと赤裸々で何故かさわやかな物語。
パパ落ち着け(笑) スポンサーサイト
|
これ、プッシュする人材絶対間違えてる。 最初の数作品を読んで箸にも棒にもかからない本だと判断しかけてたのが、舞城王太郎のDrill Hole in My Brainで評価が引っくり返った。 Delrayから単行本が発刊される予定になっていて、Faust中でも看板作家として持ち上げられている作者方の作品群よりはるかに面白い。作者グッジョブ、訳者グッジョブ。正直ドリルホール読み始めたら看板作が単なる前座にしか見えなくなってしまった。それでもって表表紙にも背表紙にも舞城の名前すら載ってないとか、扱いが全然釣り合ってないのはどういうことなんだいったい。 これ巻頭作をぱらぱら立ち読みして、Faust自体に見切りをつけちゃう人とかいるんじゃないかなあ。いやもったいない。エログロナンセンスかなり入ってるんで読者も選ぶだろうけど、注釈だらけの某作品なんか後回しにしてでも、まずはこの異常な作品を読者に突きつけて、合うか合わないか判断してもらうべきだ。 Drill Holeこそ勝負をかけるに値する作品だよ、Delrayさん。 |
本文より:
一見したところ古式ゆかしい探偵小説。しかしてその実態はメタな切り口の実験小説。 一本の間違い電話から、一人の老人の尾行を依頼される作家の話「City of Glass 」。同じくマンションに住む男の見張りから始まる「Ghost」。そして消えた幼馴染の著作を巡る「The Locked Room」。 軽快で精緻に富んだ語り口に乗せて、小さな謎が新たな謎を呼び、話は思わぬ方向に展開し、読んでいる人は知らず幻惑に取り込まれ、虚実の海原にたゆたう。独立した3作は物語内物語の多重構造で連結し、登場人物は作中作を執筆し、その登場人物は現実に姿を現し、虚構と現実は混ざり合う、そして謎は謎のまま話は終わる。ちょっとまて、何も解決してないぞ。 作中で問いかけられる謎に明確な答えはないのです。だってこれは思索に誘うための物語なのだから。 読み終えた後にWikiを読んで知ったんだけど、この本とそのテーマ、「アイデンティティーの喪失」はメタルギアソリッド2の元ネタのひとつになってるのね。(両者には同名異設定でピーター・スティルマンという人物が登場してたりもする) そう考えると、MGS2のあの、投げっぱなしでプレイヤーを困惑させる終盤の展開も、Austerの技法のオマージュとして納得できなくもないけど、……普通は気がつかんて。 |
うひー。最近職場移動になって、休日もあるようなないような大変多忙な状態になっており、ウェブ上の動向をリアルタイムでまったく追えません。ので、海外エロゲネタに対するアンテナもこれ以上無いほど鈍っております。
もうこの際、残された最後のプライベート時間(≒通勤時間)にマイペースで読める、洋書感想ブログに転身しようかなあ。てーんしーん! すぐに飽きて根を上げそうな気がするなあ。わはは。 それはさておき。
このタイトル。この表紙。見た瞬間に自分のダメな部分を著しく刺激して、こりゃあ買わねば! と即断させられてしまった一冊。 未来の女性スパイを育成するために設立されたGallagher Achademyの校長の一人娘、キャミー(Cammie Morgan)は、14カ国の異なる言語を喋り分けることができる。彼女は徒手空拳で大の大人を殺害する7つの方法を知っている。だが、訓練ミッション中カーニバルの夜に偶然出会ってしまった、普通の少年とどう接してよいのかがわからない。彼の自宅の電話を盗聴する方法は習っているし、彼のPCをハッキングすることも簡単だ。その気になればすれ違いざまに一刀で仕留めることだってできる。でも、自分の秘密を知らない少年と、どうやって付き合えばいいの?? 前半じっくりと撒いたストーリーの種を、物語佳境で畳み掛けるように結んでいく展開が読んでて快感。途中までは「んー。まあまあな作品かなー」とか思っていたけど、最後の方になったら先が読みたくて仕方ないぐらい話に引き込まれていた。いかにも予定調和のふりして、結構厳しい落とし穴に落とされて、でそのカタストロフな状況から納得できる清涼エンドに持っていかれてしまうともう、あれだ。王道展開バンジャーイと叫びたくなってしまう。いやあ、絶望の後の希望っていいもんですね。 一方、スパイ学校の先生連中が、立場の割に抜けまくってる気がするのは、まあ引き立て役として仕方ないところか。ナルトとかネギまとかも先生方一体なにやってんの、て感じだしな。 あと、この話のスパイってみんな、人間の運動能力を超えたナイフ投げとか戦闘技術に長けてたりするのは何だろう。ニンジャと同様の、ある意味わかってやっている勘違い設定って、こんなところにもあるもんなんだなあ、と変に感心したり。 |
イギリス作家の小説では、北極や南極が、現実世界と異世界の境界線として描かれていることが多いような気がする。日本で例えれば富士の樹海といったような感じで、文明の光の届かない魔境のイメージがあるのかもしれない。そういえばナルニアもワードローブの向こうは雪世界だったっけ。 主人公シムは、南極点踏破を目指して遭難全滅したスコット探検隊の一員ローレンス・オーツ大尉を、心の中にあるもう一つの人格として持っていた。彼女にとって、オーツ大尉は良きアドバイザーであり、唯一心を許せる友人でもあった。南極大陸には地中世界への入り口が存在するという説を唱える叔父に同行し、極寒の地への探検旅行へと旅立つシムであったが、彼女を待っていたのは歴史的な発見ではなく、非情な現実だった。 生きるために人間性を失っていく主人公と、既に死んでいるがゆえに人間味溢れるオーツ大尉の人格との対話が織り成すシニカルな人間絵巻。The white darknessという物語に、陽を見るか陰を見るかは、読み手次第なのかしらん。 |